賃貸借契約の流れ

不動産会社スタッフに希望条件を伝えている様子

賃貸物件を借りる際には、「知っていなければならないこと」「知っていた方がよいこと」がたくさんあります。ここではそのような情報のポイントを紹介します。

物件探しの前に予算と賃料相場を調べる

1.予算と希望を整理する

物件探しでは、たくさんなる条件の中から何が大切かを決めておくことが重要です。

すべての希望を満足させる物件を見つけることはなかなか難しいですから、どのような条件を優先するのかを決めておかないといつまでたっても物件を決められなくなってしまいます。

 

まず、いくらまでの賃料なら無理なく支払えるかということが重要になります。

予算内で何を優先させるのかを考えます。

駅に近く便利な立地、住環境のよい立地を望むのか。広さや築年数はどうか、または「階数」だけは譲れないといった条件を挙げて、優先順位を付けていきます。そうすることで物件探しをスムースに進めることができます。

 

 

2.賃料の相場を調べる

物件探しを始める際には、予算を勘案しながら自分が希望する地域の「賃料相場」を調べることが必要です。なぜ賃料相場が必要かというと、例えば相場が「10万円」の地域で「5万円台」の物件を探しても、見つかる可能性は限りなく低くなってしまうからです。自分が希望する予算と希望地域の賃料相場を比べてみて、予算が足りないときには、希望条件を譲歩して賃料相場がもっと安い別の地域で探す方が近道と言えます。

物件探しについて

パソコンの前で電話をする女性のイラスト

1.インターネットなどの物件情報から探す

インターネットによる賃貸情報収集は広範囲の情報を素早く収集できますし、賃料相場を把握するのにも非常に便利です。アットホームなどの不動産情報ポータルサイトは物件数が豊富ですから、希望エリアで多くの物件情報の中から条件に合った候補物件を楽に見つけることができます。

 

2.不動産会社の賃貸情報

不動産会社が持っている物件情報は、上記のような不動産ポータルサイトや情報誌にすべて掲載するわけではありません。例えば広告費を使わなくてもすぐに借り手がつきそうな物件や、情報を入手したばかりまたは解約予定で情報公開する手前の物件などを保有している可能性があります。このような物件は不動産会社に直接問い合わせて確認することで、条件が合えば紹介してもらえることがありますから、不動産会社の自社サイトの情報を確認したり、実際に店舗に出かけて聞いてみることも有効です。ただし、店舗に行く際はスムースに相談を受けてもらうために、事前にメールや電話で相談内容を伝えた上で予約することが必要になります。

申込みから契約まで

1.申込みについて

物件を内見して気に入った場合、不動産会社に「申込書」を提出することになります。

この申込書の書式は不動産会社や物件によって異なりますが、記入項目は住所・氏名・年齢・職業・年収など、おおむね共通しています。

申込書はあくまで入居意思を確認するための書類であって、賃貸借契約書ではありません。

したがって、申込書を提出した後でも、費用など掛からずに申込みをキャンセルすることが可能な場合があります。

提出する前に、この点を不動産会社に確認しておくとよいでしょう。

ただし、軽はずみな申込み・キャンセルは不動産会社に迷惑をかけることになるので、申込みはよく考えた上で行うようにしてください。

 

2.審査について

貸主は希望者が提出した「申込書」をもとに、その人と契約するかどうかを判断します。

これを「審査」といいます。審査にかかる時間はおおむね一週間程度です。この審査で貸主が断るケースもあります。貸主からすれば、自分の大切な資産である土地や建物を他人が使うわけですから、できるだけ経済的に安定している人や使用上のルールを守る人に貸したいと考えるのは当然のことと言えるでしょう。

審査に通るためには、まず申込書を正確に漏れなく書くことが大切です。

また、貸主から見られる可能性を考慮し、不動産会社に出向いて内見するときから言葉遣いや身なりにも気を配り、清潔感がある服装などを心がけるとよいでしょう。

 

3.申込み時の「預かり金」について

入居申込書を提出する際に、金銭を不動産会社に預けるケースがあります。

このお金は「預かり金」「申込証拠金」「申込金」などと呼ばれています。

そのまま無事に賃貸借契約が結ばれたら、預かり金は借主が支払う諸費用に充当される場合が多いです。

申込み後に何らかの理由で契約に至らなかった場合は、基本的に預かり金は全額返還されます。

その際にトラブルにならないように、「預かり証」を必ず発行してもらいましょう。

また、預かり金を納入してもあくまでも申込み段階であることに変わりはありません。

 

4.契約までに用意する書類について

(1)契約までに用意する書類一覧

 

賃貸借契約までに個人で用意する書類は次のとおりです。

 

・身分証明書

・住民票

・印鑑と印鑑証明

・収入証明

・連帯保証人の印鑑証明など

 

法人の場合は次のようになります。

 

・履歴事項全部証明書(謄本)

・印鑑証明書

・決算書

・納税証明書

・代表者の身分証明書など

 

保証会社を利用する契約の場合は連帯保証人が不要になるなど、個別で異なる部分はありますが、おおむねこのようなものが必要になる可能性があると考えておきましょう。

 

(2)契約までに用意する費用一覧

賃貸借契約までに用意する費用項目と、目安になる金額は次のとおりです。地域ごとや物件ごとに異なりますので、あくまでも目安として捉えてください。

●礼金…賃料の0~2ヵ月分

●敷金…事業用:賃料の1~10ヵ月分、居住用:1~3ヵ月

●仲介手数料…賃料の1ヵ月分以内(別途消費税)

●賃料…賃料と管理費の1ヵ月分(+日割)

●火災(損害)保険料…5千円~2万円

●保証委託料:賃料と管理費の0.5~1ヵ月分

 

(3)必要書類の用意について

賃貸借契約の際には、直近に発行された公的証明書を提出するのが一般的です。

したがって、賃貸借契約の日取りが決まったら、できるだけ早く必要書類を用意しましょう。

住民票や印鑑証明は、市区町村役所またはその出張所で交付してもらいます。

履歴事項全部証明書や法人印鑑証明書は法務局またはその出張所で交付してもらいます。

 

(4)収入証明書の用意について

賃貸借契約の際には、収入証明書の提出も必要になる場合があります。

収入証明書とは、会社員の場合は会社から年に一度交付される「源泉徴収票」が該当します。

雇用形態によっては毎月の給与明細書でもよいことがあるので、わからない場合は不動産会社に確認しましょう。

また、法人や自営業の場合は、税務署に申告をした際に交付される「確定申告書の写し」や「納税証明書」、「決算報告書」が必要になります。

昨今、口座振替が主流となっており、銀行届出印が必要な場合もあります。

これについても確認するといいでしょう。

 

(5)連帯保証人について

連帯保証人とは、万が一借主が賃料を滞納した際に未払いになった賃料債務を弁済する義務を負う人のことです。連帯保証人になってもらう人には連帯保証書に必要事項を記入してもらうほか、連帯保証人自身の住民票や収入証明書、印鑑証明書が必要になるので、こちらも早めに依頼をして承諾を得たら必要書類を準備してもらえるようにお願いしておきましょう。

 

(6)重要事項説明(書)について

重要事項説明書とは、物件概要や契約内容を詳しく記載した書類です。不動産会社は、賃貸借契約を結ぶ前にこの重要事項説明書を契約者に交付し漏れなく説明する法的義務があります(宅地建物取引業法)。重要事項説明は契約書と重複する内容も含んでいますが、非常に重要な行為だと認識しましょう。

 

重要事項説明は必ず宅地建物取引士の有資格者が行います。その際は資格証の提示も義務付けられています。重要事項説明を受けて、よくわからないことやもう一度聞きたいことがある場合は、その場で質問してください。そして、最終的に全て納得してから、契約手続きに入ってください。契約書を取り交わして入居した後で思っていたのと違ったといっても、基本的にはその意向は通りません。

 

(7)賃貸借契約について

重要事項説明が終わったら賃貸借契約を締結します。賃貸借契約書には重要事項説明書と重複する部分が多々ありますが、その相違がないかも含めて契約書の内容もしっかりと確認する必要があります。もしも不明点があるなら、すぐに不動産会社に確認しましょう。これらは署名・押印する前に必ず行います。賃貸借契約書が取り交わされた後では、契約のキャンセルは原則的にできなくなるからです。例えば、契約を結んだが後日気が変わり、入居前に契約のキャンセルを申し出たとします。入居前であっても契約は執行されていますから、基本的には礼金・仲介手数料は返還されません。敷金は戻ってきますが、前納した賃料がどうなるかなどは状況に応じた判断になるでしょう。

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